大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(つ)809号 判決

原判決挙示の証拠の標目を見ると、「押收に係る葉煙草」という項目があり、記録を精査するも原審公判廷に於て葉煙草の現物につき証拠調が為され且押收されたと認めることができないことは論旨主張の通りである。

然しながら原審に斯る証拠標目の表示をしたのは、原審が弁護人等の証拠とすることの同意に基き適法の証拠調を経た司法警察員作成の捜索差押調書の記載中に「昭和二十五年八月二十二日判事の発した捜索差押許可状に基き葉煙草(二十五キロ入)十五俵の差押をした旨」の記載があるので之を証拠に供する趣旨であつたことが認められる。

唯原判決に於ける其の表現の方法がまぎらわしかつたから論旨主張の如く法廷で適法の証拠調をしない証拠物の存在を罪証に供したものとの誤解を招いたに過ぎないのであるが、以上の見地に立つときは「押收に係る葉煙草」とは前記の通り証拠とすることにつき同意のあつた捜索差押調書中の記載事項を表示したものと解し得べく、必しも論旨主張の如き趣旨で採証の用に供したものと断定し去る必要はないのである。のみならず問題の葉煙草を法廷に顕出せしめ適法の証拠調を経た上罪証に供しなければ被告人岸政一等の窃盜、煙草専売法違反の事実は認定資料に欠けると認むべきかというに、原判決挙示の其の他の証拠を綜合すれば、葉煙草の現品が押收されて現在するか否かの証拠の有無即ち右論旨に関する点を除いても、右被告人岸政一並に相被告人平山昭治同山田善三が共謀して判示各窃盜同煙草専売法違反の所為に及んだという判示事実は容易に之を認定し得るのである。

即ち右各被告人等は原審公判廷に於ても公訴事実全部を認めている位であり、其の他記録を精査するも原審が事実誤認を冒していると認むべき点はない。

要するに原判決の証拠の標目の表示には不充分な点はあるが、仮に之を論旨主張の如く訴訟手続に関する違法あるものとして取扱つても、判決に影響を及すべき程度の違法ではないことは明であるし其の他原判決には事実誤認もなく従つて法令の適用に付誤りもないのであるから論旨は理由がない。

弁護人O控訴趣意第一点について。

論旨が理由のないことは被告人岸政一に関する論旨(第一点)につき判示したところと同一であり要するに原判決が証拠の標目として「押收の葉煙草」と表示したのは、法廷に於て葉煙草の現物につき証拠物としての取調をした結果押收の葉煙草が現存するという趣旨ではなく、当事者間に於て証拠とすることの合意があり適法の証拠調を経た司法警察員作成の捜索差押調書の記載によれば、判示葉煙草の一部が差押えられているということを示す趣旨に於て採証の用に供したものと解し得るし、仮に原判決の採証には違法があるとしても、差押に係る葉煙草が現存するか否かに関する証拠を除外しても其の余の原判決挙示の証拠により、被告人金又介同野口忠三郞等に対する原判示第三、第四の事実は其の証明充分であるから其の違法は判決に影響を及さないものと認められる。論旨は理由がない。

(註 本件は理由不備により一部破棄自判)

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